
「ワーキングプア」という言葉が使われるようになる前までは、低所得者層が注目されることはあまり多くありませんでした。
国税庁の「民間給与実態統計調査」を見ると、年収が200万円以下となるワーキングプアは・・
このような現状になっています。一方で、富裕層の割合も増加しており、貧困層との格差が次第に拡大していることが分かっています。このワーキングプアの・・
- 手取金額
- 基準となる年収
- 人数の割合や実態
これらの疑問を中心に見ていきます。
ワーキングプアは「働く貧困層」である

アメリカでは、超がつくほどの富裕層が非常に多くいます。その方達が大量のお金を所有していながら・・いくら稼いでも貧乏な生活から抜け出せない貧困層が溢れかえっています。
現代は少数の富裕層が大金をもつ世の中である
このような格差社会は日本でも更に加速しており、特に若い年齢層で深刻になっています。次に基準年収やその割合などを見ていきます。
ワーキングプア基準年収と割合

ワーキングプアの基準年収はのようになります。
総支給額が200万円以下
総支給額は年収を意味します。給与明細をもらったときには、社会保険料や住民税などが引かれる前の金額です(最も金額が高い)。その金額を1年間合計して200万円に到達していなければ、ワーキングプアの範囲に入ります。
日本全国で仕事に従事している方全体の・・
という現状があります。
厚生労働省のデータから分かる人数と実態

賃金の統計を参考にするために厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を確認します。
日本においては少子化により人口が減少していることが大きな問題となっていますが、そんな中でもワーキングプアに該当する人の割合は年々増え続けています。
ワーキングプアは最近10年は増え続けている
10年ほど前から1,000万人を超えており、特に最近の4年では1,100万人を超えています。この人数は今後も大きな変化が見られないと予想されています。
もう一つの問題は、ワーキングプアの割合が若干増加しながら推移している中で、資産(お金のみ)を1億円以上保有している富裕層は120万人を超えており、すごいスピードで増加しています。
富裕層は5年前から20%増えている
この富裕層が増加していくスピードは、世界でも注目されるほどです。
ワーキングプアの生活の現状とは
無職ではないため、毎日通勤し給料日には給与を得ています。その点では普通のサラリーマンとして見えるのですが、その金額があまりにも低いため貯蓄の金額がいつまでも増えない状態が続きます。
労働時間に対して給料が少なすぎる
勤務時間から給与額を計算すると、不当な給与を頂いているような・・
ブラック企業に勤務しているわけではありません
最低賃金にあたりの少なめの給与ではあるのですが、ちゃんとした報酬を頂いています。しかし、給料は最も底辺の金額が続いてしまうので、いつまでも同じような給与の日々が続いてしまいます。
収入アップの見込めない仕事をしている

ワーキングプアの層にいる人達の共通するポイントは、毎年の昇級に関する問題です。
給与のベースアップが期待できない
ワーキングプアが増えてしまう最も大きな問題点がここです。年功序列とはいかなくても、実績のあるスタッフの昇級を認めてくれたら良いのですが、なかなかそうはいきません。それは・・
雇用形態が関係している
といえます。好きな時間に好きなジャンルの仕事ができるフリーターと言われる人達、そして一定期間のみ企業に在籍して給与を頂く派遣社員が多くいます。
公務員の職場でも非正規雇用が増えている
正社員と同じ境遇で勤務していながら、給与が少ない派遣スタッフは、期間が満了するとまた職探しに逆戻りするため、いつまでも底辺の給料しか頂けないためワーキングプアになってしまいます。これは・・
公務員の職場でも似たような状況
となっています。地方自治体は、財政難で公務員の数を減らし続けている地域が多くあります。しかし、公共サービスの人手が足りなくなってしまうと、非正規職員を採用したり民間に委託することもあります。
それに伴って、公務員の仕事をしているのに給与が少ない・・ワーキングプアの生活となってしまうこともあり得ます。
労働者派遣法とは
ワーキングプアの層が増えている問題の根本的な要因に「賃金が不安定」であるという大きな問題があります。この派遣社員の権利を守るための法律が・・
となります。派遣社員は一時的にスタッフが足りない場合に雇用し、期間満了で雇用が終了となります。ですが、それとは関係なく派遣先企業の都合だけで「契約期間が終了(仕事が終わってしまう)」となる問題を改善するための法律です。
2015年には さらに法改正が行われ、ワーキングプア層が働きやすい環境へと改善されてきています。
労働者派遣法の改正:2015年

労働者派遣法は2015年に改正となりました。主な内容はこの3つになっています。
派遣会社は派遣先へ無期雇用化を働きかけることが義務化
派遣社員は正社員と労働環境を同じにすること
この改正の狙いは、派遣社員は三年までしか雇用できなくなり、有能な派遣社員を今後も雇いたいなら無期雇用(正社員などに登用)することを促してく環境へ改善するものです。
後に説明する「2018年問題」に関係してくるのは、この2015年の改正と、もう1つ「労働契約法」があります。
「労働契約法」は2012年に改正された
「労働契約法」とは、現代社会における雇用のありかた(雇用条件などのルール)を分かりやすく明文化したものです。この法律は2012年に改正されました。そのポイントはこちらです。
- 派遣社員が5年を超えてるなら、条件により無期労働契約へ申し込める
- 「雇止め」がができなくなる
同一の派遣会社で5年を超えて勤務しているなら、派遣社員本人から無期労働契約(正社員など)を申し込めるというルール。
そして「雇止め」とは、雇用期間が満了したら派遣先企業が契約を更新せずに止めさせることですが、この「雇止め」が条件によってできなくなります。
2018年問題とは

「労働者派遣法」の改正の内容にあった3年までの条件、そして「労働契約法」の改正内容にあった5年の条件の期限は・・
どちらも2018年になっている
これが問題となっています。派遣社員を雇用している派遣先企業は、雇用形態の決断に迫られます。
派遣会社は3年が経過した派遣社員を無期雇用で雇ってもらうように推奨する義務があります。そして派遣社員本人も、5年が経過しているため無期雇用の申請ができます。通算で5年に満たない場合には・・
別の部署で働いて5年の条件を満たして無期雇用を申請する権利を得る
という選択肢をすることがあるなど、派遣で仕事をしている方には大きな変化があるはずです。このような派遣社員の環境改善の試みと法改正は今後も続いていくはずです。
生活の実態と将来の予測
ワーキングプアのライフスタイルは、周りの人達から見ても普通の生活と変わりないように見えるはずです。しかし・・
贅沢ができない
旅行ができない
外食できない
このような外食すら厳しい状況なので、休日であっても外出せずに自宅にいることが多くなってきます。
仕事 → 会社 → 自宅 → なにもしない → 寝る → 仕事・・
毎日変わらず「お金を使わないサイクル」で生活しています。このような節約生活に迫られるのは、給与の総支給額が年間200万円に満たないと、なにも行動ができなくなってしまうからです。
手取り金額は15万円ほどである

年収が200万円以下であるなら、社会保険やその他の控除額を考慮すると・・
手取り金額は月額15万円
となります。この手取り金額なら、家賃で3分の1ほどが使われ、最低限の光熱費、食費で使ってしまうと何も残りません。毎月仕事に追われているものの「銀行の預金残高が0円」の生活がずっと続きます。
学歴とワーキングプアは関係が無い
学歴が高い方は、有名企業に就職して高額な報酬を得ていると思われがちですが、最近では有名大学を卒業していても、貯金ゼロのワーキングプアである方もいます。
学歴・経歴に関係なくワーキングプアになってしまう
こうなってしまうのは、フリーターや派遣スタッフとして働く仕事が多すぎることが影響しています。大卒からすぐにエリート企業に就職して辛抱していれば、高収入の期待ができますが・・
数年はフリーターで気楽に暮らしたい
このように思って、短期バイトや派遣会社に登録すると、正社員としてい働けるチャンスを失います。近年は・・
という考えの企業が多いので、本当に必要な人員だけしか確保しない企業が多いのです。そのため、正社員として欲しい人材から漏れてしまうと、今後もずっとワーキングプア層で生活する事になってしまいます。
まとめ:基準年収 割合 人数 実態と原因|2019年版
最近では正規雇用で働いている人でも、景気の低迷の影響から サービス残業を強いられる企業も 増えています。いわゆるブラック企業となりますが、企業側からすると倒産せずにどうにか現存のスタッフでやりくりする最終的な判断となります。
そして、過酷な労働に疲れた正社員は退職の道を選びます。すぐに希望の仕事が見つからない場合は、一時的に派遣スタッフとして働く事になりますが・・
派遣の仕事をすると、次の仕事も派遣スタッフお仕事になる
という傾向があります。正社員の求人募集よりも、派遣スタッフの募集は非常に多く希望の職種が見つかりやすいのです。そのような流れからワーキングプアになってしまう方が多くいます。
以上、ワーキングプア 手取りは? 基準年収・割合・人数・実態と原因...についてでした。